第一回廊
<乳海撹拌(にゅうかいかくはん)>
「ラーマーヤナ」に語られているヒンドゥ
ー教の天地創世神話でこの第一回廊には、
その内容が50メートルに渡りレリーフで
描かれています。
まずはこの有名な「乳海撹拌」を読んで
頂くと、モチーフの面白さが伝わって来
ると思います。
寝ている神:ヴィシュヌ
右の女神:ヴィシュヌの妃ラクシュミー
蓮の上の神:ブラフマー
<乳海撹拌の内容>
太古の昔、地球では不老不死の霊薬
アムリタを巡り神々とアスラ族(悪鬼)
との壮絶な戦い繰り広げられていました。
両者は疲労困憊し、世界の維持神ヴィシ
ュヌに助けを求めました。
ヴィシュヌは「争いを止めて互いに協力
をして大海に様々な素材を入れかき回せ
ばアムリタが得られるだろう。」と言い
ました。
それを聞いた神々とアスラ族は互いに協
力し、マンダラ山を軸棒とし、クールマ
亀王の背中で軸棒を支え、それにヴァー
スキ竜王(大蛇)を巻き付けて撹拌のた
めの綱としました。
スラ族は頭を持って上下に揺さぶりなが
ら撹拌を始めました。
多様種多様の植物や種を乳海に入れ撹拌し
のあまり口から炎の漆黒の煙(猛毒ハラ
ーハラ)を吐き出し、雷雲が生じて猛毒
の雨が降り始めました。
シヴァ神と四足動物の守護神の牛ナンディン
その時、破壊神であるシヴァが現れ、猛
毒ハラーハラを飲み込んで世界を救いま
した。この猛毒を飲んだシヴァは体が青
くなりました。
それでもアムリタは出てこず、さらに
1000年間神々とアスラ族は撹拌を続けて
いたら、やがて大海は乳海となり、良質
のバターであるギーが湧き出てきました。
そこから程なくしてヴィシュヌの妃とな
るラクシュミー、ソーマ(神酒)、太陽
、月などが現れ、そしてアムリタの入っ
た壷を持った医の神:ダンヴァンタリも
現れました。
アムリタの壺を持つ
ヴィシュヌの化身ダンヴァンタリ神
アーユルヴェーダ(インド伝統医学の神)
アスラ族は何とかしてアムリタとラクシ
ュミーを奪い取ろうとしましたが、美し
いラクシュミーに化けたヴィシュヌがア
スラに近づき、うっかりヴィシュヌにア
ムリタを渡してしまいます。
騙されたことに気づいたアスラ族は神々
を追いかけ始めましたが、ヴィシュヌか
らアムリタを受け取った神々は分け合っ
て飲んでしまいました。
その中にアスラ族の一人ラーフが神に化
け、紛れ込んでいて、アムリタを飲もう
としていました。太陽と月がラーフに感
付いてヴィシュヌに知らせると、ヴィシ
ュヌはラーフの首を切り落としてしまい
ました。
首だけが不老不死となったラーフは、太
陽と月に憎悪を抱くようになり、ラーフ
が太陽と月を飲み込む度に日蝕と月蝕が
生じるようになった。
その後、しばらくアスラ族と神々との間
に戦が続くものの、ヴィシュヌの力に押
されアスラ族は逃げ去ってしまいました。
蛇王ヴァースキーの中央でクールマ
亀王の上に乗るヴィシュヌ
蛇王ヴァースキーを綱引きのように
引っ張り合う。
右側)神々
左側)アスラ族
蛇王ヴァースキーの頭の方を持つアスラ
蛇王ヴァースキーのしっぽの方を持つ神々
指揮をする猿神:ハヌマーン
以上のように乳海撹拌はヒンドゥー教
の天地創世を物語るとても興味深く面
白い内容です。